HOMEreading bookThe Tale of Miminashi-Hoichi
声を出して一緒に読んでみましょう
耳なし芳一 Miminashi-Hoichi/日本の物語
成立年:1894年 - 1904年/作者:小泉八雲 (パトリック・ラフカディオ・ハーン)
参考:(福娘童話集きょうの日本昔話・コモンズ紙芝居日記・英語で本三昧)
第2章
ある、蒸し暑い夏の夜の事です。
和尚さんが法事で出かけてしまったので、芳一は一人でお寺に残ってびわの稽古をしていました。
その時、庭の草がサワサワと波のようにゆれて、縁側(えんがわ)に座っている芳一の前でとまりました。
そして、声がしました。
「芳一! 芳一!」
「はっ、はい。どなたさまでしょうか。わたしは目が見えませんもので」
すると、声の主は答えます。
「わしは、この近くにお住まいの、さる身分の高いお方の使いの者じゃ。殿が、そなたのびわと語りを聞いてみたいとお望みじゃ」
「えっ、わたしのびわを?」
「さよう、やかたへ案内するから、わしのあとについてまいれ」
芳一は身分の高いお方が自分のびわを聞きたいと望んでいると聞いて、すっかりうれしくなって、その使いの者についていきました。
歩くたびに、ガシャッ、ガシャッと、音がして、使いの者はよろいで身をかためている武者だとわかります。
門をくぐり広い庭を通ると、大きなやかたの中に通されました。
そこは大広間で大勢の人が集まっているらしく、サラサラときぬずれの音や、よろいのふれあう音が聞こえていました。