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声を出して一緒に読んでみましょう
舌切り雀 Shitakiri suzume/日本の物語 言い伝えによる物語/作者:不明
参考:(青空文庫)作成 楠山正雄
第3章
「おじいさん、よくいらっしゃいました」
「おお、おお、無事でいたかい。あんまりお前が恋しいので、たずねて来ましたよ」
「まあ、それはありがとうございました。さあ、どうぞこちらへ」
部屋に入ると、すずめの子はおじいさんの前に手をつくと、頭を下げました。
「黙って大事なのりをなめて申しわけございませんでした。それを怒りもせずに、ようこそたずねてくださいました」
「なんの、わしがいなかったばかりに、とんだかわいそうなことをした。でもこうしてまた会えて本当に嬉しいよ」
すずめの子は、仲間のすずめを残らず集めると、おじいさんの好きなものをたくさんご馳走しました。そして、おもしろい歌に合わせて、みんなですずめ踊りを踊って見せると、おじいさんはたいそう喜びました。
うちへ帰るのも忘れて踊りを見ていると、いつの間にか外は暗くなり始めていました。
「おじいさん、こんなむさくるしいところですけれど、今夜はここへ泊まってくださいな」
「せっかくだが、おばあさんも待っているだろうから、今日は帰ることにするよ」
「では、おみやげをさし上げます」
そう言うと、すずめの子は奥から、大きなつづらと小さなつづらを持ってきました。
「おじいさん、重いつづらに軽いつづら、どちらでもお好きな方をお持ちください」
「ごちそうになった上に、おみやげまでもらってはすまないが、せっかくだからもらっていこう。わしは年を取っているし、道も遠いから、軽いつづらを背負わせておくれ」
おじいさんは小さなつづらをもらうと、背中に背負って帰っていきました。