第5章

もう外はまっ暗になっていましたが、
おばあさんは欲ばった心でむちゃくちゃに杖をつき立てながら、

舌切りすずめ
お宿はどこだ
ちゅんちゅんちゅん

と、たずね歩きました。
野を越え山を越えて、大きなやぶのある所へ出ると、またやぶの中から声が聞こえました。

舌切りすずめ
お宿はここよ
ちゅんちゅんちゅん

おばあさんはしめたと思い、声のする方へ歩いて行くと、おばあさんに舌を切られたすずめの子が、小さな赤い家の門をあけて待っていました。
「まあ、おばあさんでしたか。よくいらっしゃいました」
すずめの子は優しくそう言いました。

すずめの子が座敷に案内しても、おばあさんは座ろうとしません。
「お前さんの無事な顔を見ればもう用は済んだ。かまってくれなくてけっこう。それより早くおみやげをもらって、おいとましよう」
すずめの子は、欲の深いおばあさんだと呆れてしまいましたが、おばあさんにもおみやげをあげることにしました。
そして、また奥から、大きなつづらと小さなつづらを持ってきました。
「おばあさん、重いつづらに軽いつづら、どちらでもお好きな方をお持ちください」
「それじゃあもちろん、重い方をもらっていきましょう」
おばあさんは、重いつづらを背中にしょい上げて、挨拶もそこそこに出ていきました。