声を出して一緒に読んでみましょう
舌切り雀 Shitakiri suzume/日本の物語 言い伝えによる物語/作者:不明
参考:(青空文庫)作成 楠山正雄
第4章
「一体、どこへ出かけたのだろう」
日が暮れてもおじいさんがなかなかもどらないので、おばあさんが心配していると、おみやげのつづらを背負って、おじいさんが帰って来ました。
「おじいさん、今ごろまでどこで何をしていたんです」
「今日はすずめのお宿へたずねて行ったんだよ。たくさんごちそうになったり、すずめ踊りを見せてもらったりした上に、このとおり・・・りっぱなおみやげまでもらってきたんだ」
おじいさんがつづらを下ろすと、おばあさんは急に機嫌がよくなって、
「まあ、それはようございましたねえ。いったい何が入っているのでしょう」
と言って、さっそくつづらのふたを開けてみると、中から目のさめるような金銀小判や、宝珠の玉が出てきました。
おじいさんは、驚きました。
「すずめは重いつづらと軽いつづらと二つ出して、どちらがいいかと言うから、わしは年は取っているし、道も遠いから、軽いつづらにしようともらってきたのだが、こんなにいいものが入っていようとは思わなかったよ」
するとおばあさんは急にまたふくれっ面をして、
「ばかなおじいさん!なぜ重い方をもらってこなかったのです。その方がきっとたくさん、いいものが入っていたでしょうに!」
と言いました。
「まあ、そう欲ばるものではないよ。これだけいいものが入っていればたくさんじゃないか」
「たくさんなものですか。よし、これから行って、わたしが重いつづらの方ももらってきましょう」
そう言うと、おじいさんが止めるのも聞かず、朝になるのも待てずに、すぐにうちを飛び出しました。