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声を出して一緒に読んでみましょう

竹取物語 The Tale of the Bamboo Cutter/日本おとぎ話 
  成立年・作者/不明 

 

第3章

八月の十五夜に近づくと、かぐや姫は夜、縁側に座ってひどく泣いていました。
それは、それは、人の目も気にせず、泣いていました。
翁(おきな)と嫗(おうな)は、この様子を見て、「どうしたんだい。」とたずねました。
かぐや姫は泣きながら話しました。
「前々から申し上げようと思っていましたが、きっとお二人が悲しまれるだろうと思い、今日まで言わずに過ごして参りました。
しかし、いよいよ黙っていられなくなりましたので、打ち明けます。
私は、この世の者ではございません。月の都の者です。」


「しかし、前世からの宿命で、この人間界へ参りました。
そして、今、帰らなければならない時が参りました。今月の十五日、あの月の国から迎えの人々が参ることになっています。
どうしても帰らなければならないので、お父様、お母様がきっと悲しむだろうと思い、春からずっとこのことを嘆いておりました。」
かぐや姫は泣きながら、こう言いました。
翁(おきな)は、
「何ということを言うのだい。私が竹の中から見つけてきた、けしの粒ほど小さかった子を私の背丈と同じ高さになるまで育ててきた。そんな我が子を、誰が渡すものか。絶対に許しはせぬ。」
と言いました。
その様子を見て、かぐや姫は、「私の方こそ、死んでしまいたい。」と泣き騒ぎ、とても耐えがたい様子でした。


かぐや姫は言いました。
「私の父母は月の都の人です。わずかの間という約束で月の都からこちらへやって参りました。しかし、このように長い年月を経てしまったのでございます。
月の都の父は葉のことも覚えておりません。
ここで、このように長く楽しく過ごしてきましたので、お二人をお親しみもうしあげています。
月の都へ帰るのは、うれしい気持ちもいたしません。悲しいだけでございます。
しかし、自分の意思ではなく、こうしてここを離れ月へ行ってしまおうとしております。」
これを聞き、みんな泣きました。使用人たちも、長年慣れ親しんでいるので、別れてしまうのをたいそう悲しみました。

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