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声を出して一緒に読んでみましょう

竹取物語 The Tale of the Bamboo Cutter/日本おとぎ話 
  成立年・作者/不明 

 

第5章

天人が箱を持って、かぐや姫のもとへ来ました。
一つには天の羽衣(はごろも)が入っています。もう一つの箱には、不死の薬が入っています。
ひとりの天人がかぐや姫に言いました。
「壺(つぼ)にある薬をお召し上がりなさい。汚れたところの物を召し上がっていたので、ご気分が悪いことでしょう。
かぐや姫はそれを少しなめました。そして、翁(おきな)と嫗(おうな)のために、形見として脱いでおいた着物の中にその薬を包もうとすると、側にいた天人がそれを止めました。
そして、天の着物をかぐや姫に着せようとしたその時、かぐや姫は言いました。
「ちょっと待ってください。天の羽衣を着た人は、心が変わってしまうと言います。お父様、お母様に、ひとこと言っておくべきことがあります。」
こう言うと、かぐや姫は手紙を書き始めました。


天人は、じれったく思い、「遅くなります。」と言いました。
かぐや姫は、「情け知らずのことを仰らないで下さい。」と言い、たいそう静かに落ち着いた様子で、帝に手紙を書きました。
「このように大勢の人をつかわし、私をお引き留め下さいますが、迎えが参りました。とても残念で悲しいことですが、
行かなければなりません。宮仕えをさせて頂けない、このような複雑な身でございます。納得できないことでしょうし、
あのように強情にも宮仕えをお受けしなかったことを無礼なことであると、帝(みかど)がお思いになっているかと思うと、
とても心残りでございます。」
そして、
「いよいよ天の羽衣を着るときになって、あなたさまのことをしみじみと懐かしく思い出されます。」
かぐや姫は、このように書くと、壺(つぼ)の薬を添えて、頭中将を呼び寄せて献上させました。


中将がそれを受け取ったので、天人はかぐや姫にさっと天の羽衣を着せました。すると、かぐや姫は、翁(おきな)を不憫(ふびん)でいとおしく思っていた気持ちも消えうせてしまいました。
この羽衣を着たかぐや姫は、悩みがなくなってしまったので、空を飛ぶ車に乗り、百人ばかりの天人を引き連れて昇天してしまいました。
その後、翁(おきな)と媼(おうな)は血の涙を流して悲嘆にくれましたが、何の甲斐もありません。
かぐや姫の書き残した手紙を読んで聞かせましたが、「命など惜しくない。いったい誰のために長生きをするのか。
何事も無駄になってしまった。」と言って、薬も飲まず、そのまま起きあがることもなく病気になって寝込んでしまいました。

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